臨床医学総論
使用上の注意
1.「国家試験出題基準(はり師・きゅう師)改訂版」の内容の記載項目、記載順序に基づいて、臨床医学総論(第2版)の記載内容に基づいて作成したサブノートです。学内試験や国家試験に役立ててください。
2.問診方法*2 →強調字体+下線は国家試験の出題部分を示し、番号は出題時期(第何回)を表しています。第15回までしか記載していません
3.清音 →強調字体は、国家試験における重要項目を表しています。
4.肉眼的血尿1 →脚注番号を挿入し、クリックすると脚注内容を参照できようにしました。元の本文に戻るには、脚注番号をクリックしてください。
5.関節可動域 →青字+イタリック体は国家試験出題基準(改訂版)には記載されていない項目を示します。
6.「誤字・脱字等のミスがあるかと思いますが、ご容赦ください。
第1章 診察法
I.概要
→省略
II.問診(医療面接)
→省略
III.視診
1.全身の観察
1)体格
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原 因 |
特 徴 |
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(1)巨人症 |
1.下垂体性巨人症1 |
A骨端線閉鎖前→巨人症 |
|
B骨端線閉鎖後→先端巨大症2 |
|||
2.マルファン症候群3 |
四肢が異常に長い、くも状指 |
||
(2)低身長症 |
1.骨疾患 |
A 軟骨異栄養症4 |
骨の発育遅延、停止、骨変形 |
B くる病5 |
|||
2.内分泌疾患 |
A 甲状腺機能低下症(クレチン病6*8) |
巨舌、小児様の顔貌 |
|
B 下垂体機能低下症7*8 |
生後2~3年は正常、以後遅延 |
||
3.その他 |
ターナー症候群8*8 |
|
2)栄養状態
(1)肥満
1.単純性肥満:体質的肥満で最もふつうにみられる(肥満全体の90~95%をしめる)
2.症候性肥満:疾患にもとづく肥満
A 原因
疾 患 |
特 徴 |
a.クッシング症候群9*3*17 |
中心性肥満10、水牛様肩甲部脂肪沈着*13 |
b.性腺機能不全11 |
脂肪が腰部、乳房等に沈着し女性的外観 |
c.甲状腺機能低下症*11 |
粘液水腫による |
d.インスリノーマ12 |
低血糖発作を避けるための過食による |
(2)るいそう(やせ*3)
1.単純性やせ:食物摂取不足やダイエットが原因となる
2.症候性やせ:疾患が原因となる続発性のやせ
分 類 |
原 因 |
A 精神的影響 |
神経性食思不振症13 |
B 内分泌疾患 |
a.甲状腺機能亢進症*17(バセドウ病14) |
b.下垂体機能低下症*17(シーハン病15) |
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c.副腎皮質機能低下症 (アジソン病16*17) |
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d.糖尿病17*3 |
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e.褐色細胞腫18*3 |
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C 悪液質19 |
消耗性疾患、がん末期など |
3)姿勢
名 称 |
原因疾患 |
特 徴 |
(1)エビ姿勢 |
胆石症、尿管結石症疝痛発作 |
側臥し、体を海老のように屈曲する |
(2)起坐呼吸 |
坐位または胸の前に布団を当て、もたれかかる22 |
|
(3)マン・ウェルニッケ姿勢 |
片麻痺 |
患側上肢→屈曲内転位 患側下肢→伸展外転位 |
(4)特有な前屈姿勢*9*18 |
パ-キンソン病*9*18 |
体をやや前屈し肘関節を屈曲、前腕を前に保持 |
(5)弓そり緊張(後弓反張) |
腹部を前方に突出し弓なりに反り頭部と踵で体を支持 |
|
(6)坐骨神経痛性脊柱側弯*9 |
腰椎椎間板ヘルニア*9 |
痛みを避けるため体幹を一側に傾ける |
(7)亀背*9 |
くる病*9、脊椎カリエス |
|
(8)腰椎前彎増強*9 |
進行性筋ジストロフィー*9 |
|
4)歩行
名 称 |
原因疾患 |
特 徴 |
|
(1)疼痛性跛行*15 (逃避跛行*14) |
下肢の疼痛(変形性股関節症*15) |
痛みがある下肢の接地時間を短くする |
|
(2)間欠性跛行*2*10*13*15*16 |
1.バージャー病25、 閉塞性動脈硬化症*15 |
歩行を持続すると、疼痛などにより歩行が困難になるが、休むと可能 |
|
2.腰部脊柱管狭窄症26*10*16 |
|||
(3)トレンデレンブルグ歩行*2*4*16 (弾性墜下性跛行*10) |
1.先天性股関節脱臼*2 |
患側下肢で起立すると、健側骨盤が下降する |
|
2.中殿筋麻痺 |
|||
(4)片麻痺歩行(痙性歩行*8) (分回し歩行*4*16) |
片麻痺*6(脳卒中*4*16後遺症) (上位運動ニューロン障害*8) |
麻痺下肢を外転しながら円弧を描き歩く |
|
(5)失調性歩行*2*10*15 |
|
|
|
|
1.小脳性*2(酩酊性歩行) |
小脳疾患(小脳変性症*2、腫瘍) |
体幹動揺がひどく、ジグザグ歩行 |
2.脊髄性(踵打ち歩行) |
脊髄癆(脊髄後索障害) |
歩幅が大きく踵を地面に叩きつけ歩く |
|
3.前庭性(酩酊性歩行) |
メニエール病(前庭神経系障害) |
平衡障害が強く、酔っ払いのように歩く |
|
(6)小歩症 |
パーキンソン病*2*6*15*16 |
1.すくみ足*2*16 2.小歩 3.前方突進 |
|
(7)麻痺性歩行*10 (鶏歩*6*8*14) |
(総)腓骨神経麻痺*6(前脛骨筋麻痺) (下位運動ニューロン障害*8) |
尖足のため足を高く上げ最初につま先最後に踵をつけて歩き、疼痛はない*14 |
|
(8)動揺性歩行 (アヒル歩行*8*15) |
1.進行性筋ジストロフィー症27*2*6 |
後方に反り、腰を左右に振って歩く ガワース徴候28→陽性 |
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2.両側性先天性股関節脱臼*15 |
|||
(9)随意性跛行*14 |
1.小児股関節結核 |
跛行がみられるが,疼痛が軽いため意識すると跛行しない |
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2.ペルテス病29 |
5)顔貌
名 称 |
原因・疾患 |
(1)無欲状顔貌*2 |
高熱疾患(腸チフス)、うつ病*2 |
(2)仮面様顔貌*2*18 |
パーキンソン病30 |
(3)ヒポクラテス顔貌*2 |
消耗性疾患(癌末期*2)等による悪液質*18 |
(4)満月様顔貌*2*18 |
1.クッシング症候群31*2 |
2.ステロイドホルモン過使用 |
6)皮膚の色調
症 状 |
原 因 |
疾 患 |
(1)蒼白*1 |
血管内血色素(ヘモグロビン )減少 |
重症貧血*1、ショックなど |
(2)チアノ-ゼ*1*17 |
末梢血の還元ヘモグロビン増加 |
先天・後天性心疾患32、肺機能障害、 末梢循環障害による低酸素血症*1 |
(3)黄色*1 |
血清中のビリルビン濃度が上昇 |
溶血性・肝細胞性・閉塞性黄疸33 |
(4)褐色、黒色 |
メラニン色素沈着 |
アジソン病*1 |
(5)白色 |
メラニン色素脱失 |
先天性白皮症、白斑 |
7)レイノー現象*7*13*18
(1) 誘発刺激 :寒冷(振動)
(2) 発現部位 :四肢末梢部
(3) 色調の変化:1.蒼白 →2.チアノーゼ →3.発赤
(4) 原因 :レイノー病、膠原病34(強皮症[全身性硬化症*18]、全身性エリテマトーデス35)、閉塞性血栓血管炎、斜角筋・頚肋症候群36、振動工具常用)
8)浮腫
分類 |
原因疾患 |
出現部位 |
|
(1)局所的浮腫 |
クインケ浮腫37*5、局所の感染、外傷 |
|
|
(2)全身性浮腫 |
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|
|
|
1.心臓性浮腫38*3*10 |
うっ血性心不全 |
下肢(足首)、下垂部→全身 夕方に増強*10 |
2.腎臓性浮腫39*3*10 |
腎炎、ネフローゼ症候群40*5(低蛋白血症*5) |
顔面*10(眼瞼部)→全身 |
|
3.肝臓性浮腫41*3*10 |
重症肝障害(肝硬変42) |
腹水*10→全身 |
|
4.栄養性浮腫43*10 |
悪液質(癌・栄養失調等の低蛋白血症) |
下腿→全身*10 |
|
*.非圧痕性浮腫 |
粘液水腫44*3 |
顔面~全身 |
9)発疹
(1)分類 |
名 称 |
状 態 |
備 考 |
1.原発疹 (健康な皮膚に原発する) |
紅斑 |
皮膚面から隆起しない限局性の発赤 |
硝子圧法→消退する |
紫斑 |
皮下組織内の出血 |
硝子圧法→消退しない |
|
丘疹*7*15 |
皮膚から半球状、扁平に隆起 |
直径5mm程度まで |
|
結節*7 |
豌豆大(直径10mm)以上 |
||
水疱*7 |
表皮内に漿液が貯留した半球状隆起 |
帯状疱疹、単純性疱疹 |
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膿疱 |
水疱の内容物が膿液となったもの |
膿液により黄色にみえる |
|
膨疹45 |
限局性の境界鮮明な扁平隆起 |
真皮上層組織の浮腫 |
|
2.続発疹*7*15 (原発疹に続発する) |
びらん*15 |
表皮に限局した組織欠損 |
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潰瘍*15 |
真皮、皮下組織まで達する組織欠損 |
治癒後瘢痕を残す[褥創] |
|
痂皮*15 |
分泌物が固まったもの |
かさぶた |
|
瘢痕 |
創傷が結合組織で修復された状態 |
肉芽組織上を表皮が被う |
|
鱗屑 |
表皮角層上層が角質片となって剥脱 |
|
|
膿瘍*7 |
空洞に膿が貯留したもの |
|
(2)発疹をきたす全身疾患
疾 患 |
特 徴 |
1.麻疹46 |
コプリック斑47 |
2.猩紅熱48 |
口囲蒼白 |
3.腸チフス49 |
バラ疹 |
4.全身性エリテマトーデス*18 |
蝶形紅斑50*18 |
5.ベーチェット病51 |
口腔粘膜潰瘍、陰部潰瘍など |
6.慢性肝障害(肝硬変*18) |
10)爪
症 状 |
疾 患 |
(1)爪がうすく扁平となり、陥凹 |
[スプーン様爪]鉄欠乏性貧血54*6 |
(2)爪が縦横に凸状に変形 |
[太鼓ばち指]ファロー四徴、肺気腫など |
2.局所の観察
1)目
|
症 状 |
原 因 |
(1)眼瞼 |
1.上眼瞼の下垂 |
A 動眼神経麻痺 |
B 頚部交感神経節後線維麻痺 |
||
C 重症筋無力症55 |
||
2.閉眼不可 |
顔面神経麻痺 |
|
(2)眼球 |
1.眼球突出 |
甲状腺機能亢進症56 |
2.運動障害 |
外眼筋麻痺(A 動眼、B 滑車、C 外転神経麻痺*6) |
|
3.眼球結膜黄染 |
黄疸 |
|
4.角膜白濁 |
先天性梅毒 |
|
5.眼振 |
平衡覚障害57、極度の視力低下、アルコール中毒 |
(3)失明の原因疾患*12:糖尿病性網膜症58*12、緑内障*12、網膜色素変性症59*12
2)鼻
鼻尖部が発赤:[鼻性ざ瘡]肝硬変
3)口臭
(1) 尿臭 :尿毒症、肝性昏睡60
(2) アセトン臭*1:糖尿病性昏睡*12*15、高度のアシドーシス
(3) 肝性口臭(ネズミ臭):肝性昏睡患者
4)舌
(1) 形、運動
舌偏位]片麻痺(舌下神経麻痺):麻痺側に片寄る
(2) 舌の局所性変化
赤く舌乳頭腫脹:[イチゴ舌]猩紅熱61
(3) 味覚検査
1.舌前2/3の味覚障害:顔面神経障害*4(鼓索神経)
2.舌後1/3の味覚障害:舌咽神経障害*4
5)胸郭
名 称 |
状 態 |
疾 患 |
(1)樽状胸*14 |
前後が横径より大で樽状 |
肺気腫62*14 |
(2)扁平胸 |
狭長で、前後に扁平 |
無力型体型 |
(3)漏斗胸 |
胸骨、剣状突起が著明に陥凹 |
マルファン症候群、先天的 |
(4)ロザリオ胸 |
胸骨の肋軟骨付着部が腫脹 |
くる病 |
(5)鳩胸 |
胸骨下部が突出し両側扁平 |
6)乳房
(1) 女性化乳房:男性で乳房が女性の様に腫脹[肝硬変]
(2) 心尖拍動63の正常位置:通常坐位で、左第5肋間、鎖骨中線のやや内側
7)腹部の触診
(1) 腹壁
1.腹壁静脈の怒張64:肝硬変(門脈循環障害)、下大静脈塞栓症
2.赤色皮膚線条 :クッシング症候群
(2) 腹部全体の膨隆 :腹水、卵巣嚢胞65、鼓腸、妊娠、腹部腫瘍、肥満
(3) 腹部全体の陥凹 :急性汎発性腹膜炎、悪液質
(4)[腸管蠕動不隠] :腸管の蠕動運動が腹壁を通して認められる(原因→腸管通過障害)
8)手の変形
名 称 |
症 状 |
疾 患 |
|
(1)猿手 |
母指球・小指球の萎縮扁平化*7、母指内転位で他の四指と同一平面上 |
正中神経麻痺*7*9など |
|
(2)鷲手 |
背側骨間腔が著明に陥凹し中手指節関節背屈・遠位指節間関節屈曲 |
尺骨神経麻痺*7*9など |
|
(フローマン徴候66陽性) |
|||
(3)下垂手*9[落下手] |
手関節が垂れ下がった状態 |
橈骨神経麻痺*7*9 |
|
(4)デュプイトレン拘縮*6 |
1~数指(第3,4,5指など)が手掌側に屈曲し、伸展できない |
手掌筋(腱)膜の短縮 |
|
(5) |
1.スワンネック変形*14 |
遠位指節関節屈曲・近位指節関節過伸展 |
関節リウマチ*6*14 |
2.ボタン穴変形*6*14*18 |
遠位指節関節過伸展・近位指節関節屈曲 |
||
3.尺側偏位*14 |
第2~5中手指節関節の尺側への亜脱臼 |
||
(6)ヘバーデン結節*18 (ヘーベルデン結節*6) |
遠位指節間関節の辺縁背側に小さい結節状の骨隆起67 |
変形性関節症*6*18の一種 |
|
(7)鋤手 |
手が大きく、広い角ばった手掌と太い指のため鋤のような形状となる |
先端肥大症 |
|
(8)クモ状指*6*14*18 |
指が細長くなる |
マルファン症候群*6 |
|
(9)太鼓ばち指 |
手指末節が腫大して、爪が前後面、側面の両面からみて凸状になり、太鼓のばち様となる |
肺気腫、原発性肺がん、 ファロー四徴68 |
9)足の変形
(1) 足尖が垂れ下がる[尖足] :(総)腓骨神経麻痺→[鶏歩]
(2) 足が背屈し踵で歩行[踵足]:脛骨神経麻痺(鈎足)
IV.打診
1.種類
1)清音69:肺野
2)濁音70
(1) 絶対的濁音71:心臓、肝臓、大腿部
(2) 比較的濁音72:心臓周辺部
*)体位変換現象:胸水・腹水など体腔に水が貯留すると体位変換により水が移動し打診音が変化する(胸水・腹水貯留75部位→濁音)
2.胸部
1)肺野の打診
(1)濁音*16
1.肺炎、肺化膿症76、腫瘍、無気肺77(肺組織の空気含有量の減少)
2.胸水貯留*16、胸膜炎*16(胸膜の肥厚による)
(2)過共鳴音78*16:肺気腫*16、気胸*16
(3)肺肝境界 :右鎖骨中線上で、第6肋間
(4)肺下界の下降 :肺気腫
2)心臓の打診
(1)相対的心臓濁音界79
1.右界:胸骨右縁
2.上界:第3肋骨
3.左界:鎖骨中線のやや内側
3.腹部の打診
1)鼓音の増強+腹部膨隆 :[鼓腸]麻痺性イレウス80
(1)臍部上方で鼓音の増強:小腸の狭窄・閉塞
(2)左季肋部で鼓音の増強:下行結腸(とくにS状結腸)の通過障害
2)胃泡の変化81
(1)鼓音増強:空気嚥下症、急性胃拡張
(2)鼓音消失:噴門部がん、アカラシア82、脾腫
V.聴診
1.肺の聴診
1)呼吸音の種類
(1)正常呼吸音
|
原因 |
聴取音 |
聴取時期 |
聴取部位 |
1. 気管呼吸音 |
気管気管支の気流 |
高音性 |
呼気・吸気時 |
限定83 |
2.肺胞呼吸音 |
肺胞拡張時の気流 |
低音性 |
主に吸気時 |
肺野の大部分 |
3.気管支肺胞音 |
(1)、(2)の混合したもの |
右肺尖部、鎖骨下、肩甲間部 |
(2)病的異常
|
原因 |
疾患 |
|
1. 正常呼吸音の異常 |
|
|
|
|
A 増強 |
換気量増大、気流の乱れ等 |
気管支炎、肺炎、肺結核 |
|
B 減弱*9 |
伝達低下 |
胸水貯留、気胸*9、肺気腫*9、無気肺* |
2. ラ音(副雑音) |
|
|
|
|
A 乾性ラ音(連続音)84 |
粘稠性分泌物の貯留、気道狭窄 |
気管支炎、気管支喘息、気管支拡張症85 |
|
B 湿性ラ音(断続音)86 |
流動性分泌物の貯留 |
気管支炎、肺炎、肺結核、肺うっ血87 |
3. 胸膜摩擦音88 |
壁側、臓側胸膜の摩擦 |
乾性胸膜炎 |
|
4. 呼吸音の左右差 |
片側に発生する |
気胸89*7 |
2.心臓の聴診
1)異常心音、心雑音 |
原因 |
疾患 |
(1)心音亢進 |
|
甲状腺機能亢進症、(心臓弁膜症、不整脈) |
(2)心音減弱 |
|
肺気腫、心嚢水貯留、心筋梗塞、心筋炎 |
(3)心雑音 |
血流の乱れによる振動90 |
心臓弁膜症、先天性心奇形 |
(4)機能性心雑音 |
収縮期に雑音が生じる |
貧血、甲状腺機能亢進症 |
(5)心膜摩擦音 |
壁側、臓側心膜の摩擦 |
急性心膜炎 |
3.腹部の聴診
1)グル音
(1)原因:腸管蠕動運動で空気と内容物が移動するために聞かれる音
(2)増強:腸管通過障害91、急性腸炎 (狭窄・閉塞部の上位蠕動運動の亢進による)
(3)消失:麻痺性イレウス92、急性腹膜炎(蠕動運動の停止による)
VI.触診
1.意義と方法
2.皮膚・皮下組織
1)代表的な圧痛点
疾 患 |
名 称 |
部 位 |
(1) 胃潰瘍 |
1.ボアス点 |
第10~12胸椎棘突起の側方3㎝ |
2.小野寺殿部点 |
腸骨陵下方3~4㎝(上前腸骨棘と上後腸骨棘の中間) |
|
(3) 虫垂炎 |
1.マックバーネー点 |
右臍棘線(右上前腸骨棘と臍を結んだ線)上で A 上前腸骨棘から約5㎝ B 外1/3と中1/3の境界点 |
2.ランツ点 |
左右上前腸骨棘を結ぶ線上で右外方1/3と中1/3の境界 |
|
3.ムンロー点 |
右臍棘線上で腹直筋の外縁部 |
3.筋肉
1)筋萎縮93
(1)筋萎縮分布
筋萎縮部位 |
疾 患 |
1.四肢全域 |
筋緊張性ジストロフィー症94、(多発性神経炎)、多発性筋炎? |
2.四肢遠位 |
|
3.四肢近位*11 |
|
4.分散・局在 |
脊髄空洞症100、(脊髄腫瘍、椎間板ヘルニア、末梢神経障害) |
5.特異的局在 |
進行性筋ジストロフィー症顔面肩甲上腕型101 |
2)病的肥大[仮性肥大102]:進行性筋ジストロフィー症デュシェンヌ型
3)筋の自発的収縮 :[線維束性攣縮103*5*10]末梢性運動ニューロン障害(核・核下性障害)
4)筋緊張(筋トーヌス) :筋の生理的な緊張
原因 |
特徴 |
||
(1)筋ト−ヌス亢進 (触診で硬く感じ、他動運動への抵抗の亢進) |
|||
1. 痙直(痙縮*14) |
錐体路障害(痙性麻痺*8) |
折りたたみナイフ現象104*8 |
|
2. 硬直(固縮*14) |
錐体外路障害 |
鉛管現象105 パーキンソン病→歯車現象 |
|
(2)筋ト−ヌス低下(触診で軟らかく感じ、他動運動への抵抗の減弱) |
|||
1. 麻痺を伴わない低下 |
小脳疾患 |
振り子様運動106*8 |
|
2. 麻痺を伴った低下 |
末梢神経麻痺 |
弛緩性麻痺*8 |
4.骨・関節
1)骨折の五大症状
(1)疼痛107
(2)機能障害 (運動不可能)
(3)変形 (骨折片転移、内出血による腫脹)
(4)異常可動性(骨折部で可動)
(5)軋轢音 (骨折端が互いに触れギシギシ音が生じる)
5.腹部
1)腹壁の触診
(1) 腹壁筋肉が緊張・硬い:[筋性防御108]
(2) 反動痛 :[ブルンベルグ徴候109*14]圧迫時よりも手を離した瞬間に強い疼痛
2)各部位の触診
(1) 腎臓の触診法 :双手触診法を用いる*10
(2) クールボアジェ徴候110*14 :右季肋部に球状の腫大した胆嚢が触知される状態
6.リンパ節の触診
(1) リンパ節腫脹をきたす疾患
疾 患 |
原 因 |
特 徴 |
1.化膿性リンパ節炎*3 |
化膿により所属リンパ節が腫脹 |
軟らかく、圧痛*3、発赤がみられる |
2.結核性リンパ節炎*3 |
頚部に好発 |
発赤、熱感、疼痛*3はない |
3.伝染性単核症 |
EBウイルス |
軟らかく、疼痛があり、癒着はない |
4.梅毒 |
|
軟らかく、周囲と癒着し疼痛はない |
5.悪性リンパ腫*3 |
ホジキン病111、非ホジキン病 |
発赤・局所熱感・圧痛*3はなく硬い |
6.白血病 |
リンパ性白血病 |
圧痛・癒着はなく、全身性 |
7.悪性腫瘍リンパ節転移112*3 |
癌細胞のリンパ節転移 |
硬く、表面不整で、圧痛はない*3 |
VII.生命徴候
1.脈拍
1)脈状の異常(動脈炎症候群(脈なし病)では脈拍が触れないことがある*7)
名 称 |
原 因 |
|
(1)脈拍数 |
健康成人→65〜85回/分 |
|
|
1.頻脈113*1*2 |
|
|
2.徐脈116*2*3*18 |
甲状腺機能低下症、頭蓋内圧亢進(脳圧亢進*2)117、迷走神経亢進症(ワゴトニー)、スポーツ心臓、洞不全症候群*2、アダムス・ストークス症候群118*18 |
(2)脈拍の大きさ |
動脈の拍動の振幅で、収縮期と拡張期の動脈壁の動きの幅 |
|
|
1.大脈:大きいもの |
大動脈弁閉鎖不全症119、甲状腺機能亢進症、高熱時 |
|
2.小脈:小さいもの |
大動脈弁狭窄症120など |
(3)脈拍の遅速 |
拍動の振幅の変化する速さ(頻脈、徐脈との違いに注意) |
|
|
1.速脈(変化が急) |
大動脈弁閉鎖不全症、甲状腺機能亢進症 |
|
2.遅脈(変化が緩) |
大動脈弁狭窄症 |
(4)脈拍の緊張度 |
脈の硬度、強さ |
|
|
1.硬脈(強圧迫で拍動消失) |
高血圧 |
|
2.軟脈(弱圧迫で拍動消失*7) |
低血圧、ショック*7 |
2)不整脈*3(脈拍のリズムが乱れているものいい、心拍不整を示す)
名 称 |
特 徴 |
疾 患 |
(1)洞性不整脈*3 (呼吸性不整脈*10) |
吸気時に脈拍数が多く、呼気時に少ない*3 |
迷走神経興奮の変化121 |
(2)期外収縮*3 |
起こるべき心拍より早期に起こったもの122 (脈拍は欠滞して触れないことがある) |
心疾患、ジギタリス中毒123、健常者 |
(3)絶対性不整脈*3 |
脈拍の間隔、強さ、大きさが不同で不規則 |
心房細動124*3*10 |
(4)心ブロック |
洞結節より心室への刺激伝導障害 左脚完全ブロック→触診では変化なし*10 |
房室ブロック125 |
(5)交互脈 |
脈拍の大きさが交互に変わるもの |
心筋障害(心筋梗塞など) |
(6)奇脈 |
吸気時に脈拍が小さくなり、時に触れない |
心膜炎、縦隔腫瘍 |
2.呼吸
1)異常呼吸(病的呼吸)
名 称 |
状 態 |
疾 患 |
(1)チェーン・ストークス呼吸 |
はじめ小さい呼吸が生じ、次第に大きい呼吸となり、極めて大きな呼吸となった後に小さくなり無呼吸となる周期的呼吸 |
予後不良の徴候126 (重症心・腎・脳疾患や薬物中毒など) |
(2)クスマウル呼吸 |
異常に深く大きく、かつ数も増加した呼吸 |
糖尿病性昏睡、尿毒症性昏睡127 |
(3)ビオー呼吸 |
急速に短い呼吸を4~5回行った後、無呼吸(10~30秒)となり、その後再び呼吸する |
脳圧亢進時 |
3.体温
1)体温測定部位*2
(1) 直腸検温法*2:腋窩温より0.6~1.0℃高い*2
(2) 口内検温法 :腋窩温より0.2~0.5℃高い*2
2)体温異常
(1) 発熱:体温が37℃を超えるときをいう
(2) 熱型:発熱時の体温の変化の経過をグラフにあらわしたの
名 称 |
特 徴 |
疾 患 |
1.稽留熱 |
体温が持続的に高く、日内変動が1℃以内 |
髄膜炎、大葉性肺炎、腸チフス |
2.弛張熱 |
体温が持続的に高く、日内変動が1℃以上あるが37.0℃以下には下がらない |
|
3.間欠熱 |
日内変動が1℃以上で、低いときには正常体温まで下がる |
弛張熱と同様の疾患 |
4.周期的熱 |
周期的に高熱期と無熱期がくる |
マラリア130 |
5.波状熱 |
不規則に高熱期、無熱期をくり返すもの |
ホジキン病131 |
(3) 下熱:高熱が下降することをいう
名 称 |
特 徴 |
1.分利 |
高熱が急速に下降する132 |
2.渙散 |
高熱が数日数週を要して徐々に下がる |
(4) 低体温:体温が36.0℃未満のもの
持続的低体温*16:甲状腺機能低下症*11*16、慢性消耗性疾患
4.血圧
1)測定方法
(1) 測定肢位(坐位で*8、通常上腕で測定する*11)
1.触診法
触診法の欠点*8
A 最大血圧は、聴診法と比べ低く測定される*11
B 最小血圧は測定できない
2.聴診法
血管音と測定値
スワンの各点 |
血管音の変化 |
測定血圧 |
A第1点 |
血管音が聞こえ始める |
最大血圧 |
B第4点*11 |
突然、血管音が小さくなる |
第5点の無い場合133に使用 |
C第5点*8 |
血管音が消失する |
最小血圧 |
(2) 高血圧基準*2(1999 WHO・ISH基準)
|
正常領域 |
正常高値 |
高血圧領域 |
1.最大血圧 |
130 mmHg未満 |
正常と高血圧と中間値 |
140 mmHg以上 |
2.最小血圧 |
85 mmHg未満 |
90 mmHg以上 |
|
|
最大・最小血圧が異なる分類に属する場合は高い分類を適用する |
(3) 低血圧の基準
1.男子:最大血圧 100mmHg未満
2.女子:最大血圧 90mmHg未満
VIII.神経系の検査
1.感覚検査
1)分類
(1) 表在感覚134*2
1.種類:A 触覚、B 痛覚、C 温度覚
(2) 深部感覚135
1.種類:A 関節覚(a位置覚136、b運動覚137)、B振動覚、C 深部痛覚
2.異常時の障害部位:脊髄後索の障害を疑う
(3) 複合感覚
1.種類:A 立体覚138、B 2点識別覚139、 C 皮膚書字試験140*15、 D 局所覚141
2.異常時の障害部位:触覚が正常で複合感覚が異常の場合には反対側の頭頂葉の障害を疑う
2)感覚異常
障害部位 |
症 状 |
|
(1)大脳皮質の障害
|
頭頂葉障害 (知覚領野) |
対側の表在・深部知覚は健在で、複合知覚が障害される |
(2)視床の障害 |
|
A反対側半身性に全知覚消失 B知覚鈍麻部位に発作性激痛[視床痛]や運動麻痺 |
(3)脊髄の障害 |
1.脊髄完全障害 (外傷、脊髄炎) [脊髄横断症候群] |
A障害脊髄節の上界部に知覚過敏帯142 B障害脊髄節より下位は全知覚消失 C障害脊髄節部に弛緩性麻痺 D障害脊髄節より下位に痙性麻痺 |
2.中心管周辺灰白質 障害 (脊髄空洞症) |
その脊髄節の痛覚、温度覚は消失する143が触覚、深部知覚は正常である→[知覚解離*13] |
|
3.半側完全障害 (腫瘍など) [ブラウン・セカ−ル症候群*6*7] |
A障害脊髄節部の半側性全知覚消失 B障害脊髄節部の半側性弛緩性麻痺 C障害脊髄節以下の障害側の深部、複合知覚消失 D障害脊髄節以下の障害側の痙性麻痺 E障害脊髄節以下の反対側に痛覚、温度覚消失 |
|
(4)末梢神経の障害 |
|
単発・多発性(多発神経炎*7)に起こり、知覚・運動の両者が障害される(手袋靴下型知覚障害*7) |
2.反射検査
1)意義
(1)反射弓(末梢神経*1*3、神経根*1、脊髄前角細胞*1)や
(2)反射弓に抑制をかけている上位中枢(錐体路144*1) の障害や障害部位の高位診断を行う
2)分類
(1)表在性反射
1.粘膜反射
2.皮膚反射:消失、減弱 →A 反射弓障害、B 錐体路障害
(2)深部反射 :1.消失、減弱*5→反射弓障害、2.亢進→錐体路障害*1
(3)病的反射*5 :出現→錐体路障害*3*5
(4)クローヌス :出現→錐体路障害で出現
(5)自律神経反射(臓器反射)
3)反射概要
(1) 表在反射145*4*8
分 類 |
名 称 |
反射中枢 |
1.粘膜反射 |
A角膜反射*10 |
橋 |
B鼻粘膜反射*8 |
脳幹、上部頚髄 |
|
C咽頭反射*8 |
延髄 |
|
2.皮膚反射*14 |
A腹壁反射*14 |
上部[Th6~ 9] 中部[Th9~11]*2 下部[Th11~L1] |
B挙睾筋反射*4*8*14 |
L1 |
|
C足底反射 |
S1、2 |
|
D肛門反射*14 |
S4、5 |
(2) 深部反射146*4
A眼輪筋反射 |
橋 |
B下顎反射*8 |
橋 |
C二頭筋反射*5 |
C5、6*5 |
D三頭筋反射*5 |
C6、7*5 |
E橈骨反射 |
C6~8 |
F尺骨反射 |
C6~8,Th1 |
G膝蓋腱反射*2*4*5 |
L2~4*5 |
Hアキレス腱反射*3*5 |
S1、2*3*5 |
(3) 病的反射147*4
|
反射名 |
求心刺激 |
反射効果 |
|
|
Aバビンスキー反射*4*5*6*7 |
足底外側を踵から足指に向け擦る |
母指背屈 |
|
|
Bチャドック反射 |
外果の後下部をこする |
||
|
Cオッペンハイム反射 |
脛骨前面を下方へこする |
||
|
Dゴードン反射 |
腓腹筋を強くつまむ |
||
1.下肢 |
Eシェーファー反射 |
アキレス腱を強くつまむ |
||
|
Fゴンダ反射 |
母指以外の4足指(特に第4足指)を強く屈曲し急にはなす |
||
|
||||
|
Gロッソリモ反射 |
足指のつけ根を叩打 |
足指の 足底屈曲 |
|
|
Hメンデル・ベヒテレフ反射 |
足背の外側を叩打 |
||
|
Aホフマン反射 |
中指末端を屈曲し急に背側に放す |
母指屈曲 |
|
2.上肢 |
Bトレムナー反射*4 |
中指末端を背側に向かってはじく |
||
|
Cワルテンベルグ反射 |
第2~5指の腹側に指をおき叩打 |
(4) クローヌス148[間代]
名 称 |
求心刺激 |
反射効果 |
A膝クローヌス |
膝蓋骨を下腿方向へ衝動的に移動 |
四頭筋の間代 |
B足クローヌス |
足関節を衝動的に背屈させる |
腓腹筋の間代 |
(5) 自律神経反射*4(臓器反射)
1.瞳孔反射
A 対光反射*5*6*10
1)方法 :瞳孔に光を当てる→瞳孔が縮小する*5
反対側の瞳孔も同時に縮小する→共感性対光反射
2)反射弓:視神経→中脳→動眼神経*4
B 輻輳反射*5*6*10
1)方法 :視線を近くに注視させる→両眼が内側偏位(輻輳)→瞳孔が縮小する*5*6
2)反射弓:視神経→後頭葉→動眼神経*4
C 瞳孔反射の異常
対光反射(-)、輻輳反射(+)→アーガイル・ロバートソン徴候*4[脊髄癆149]
2.眼球心臓反射(アシュネル反射*10)
A 方法 :両側眼球を指で圧迫→徐脈をきたす
B 異常 :10回/分以上の減少(迷走神経緊張状態で生じる)
C 反射弓:三叉神経→延髄→迷走神経*10)
3.頚動脈洞反射*5*6(ツェルマク・ヘーリング反射)
A 方法 :頚部で一側の頚動脈洞を圧迫→徐脈*5、血圧降下*6をきたす
B 異常 :アシュネル反射と同様
C 反射弓:舌咽神経→延髄→迷走神経
3.脳神経機能検査
1)視神経
症 状 |
原 因 |
疾 患 |
||
(1)視野の異常 |
|
|
||
|
1.一側性全視野欠損 |
視神経交叉部より下位での一側の視神経障害 |
外傷、球後視神経炎 |
|
|
2.同名性半盲 |
視神経交叉部より上位での障害 |
外傷、腫瘍 |
|
|
3.異名性半盲150*12 |
視神経交叉部の障害 |
下垂体腫瘍 |
|
|
4.視野の部分的欠損 |
A 中心部→うっ血乳頭、軸性視神経炎151 |
|
|
|
B 他部位→網膜出血など |
|
||
|
5.視野狭窄 |
|
緑内障 |
|
(2)眼底の変化 |
|
|
||
|
乳頭発赤、境界が不鮮明 |
うっ血乳頭(乳頭浮腫) |
脳圧亢進152 |
2)動眼神経*4
(1) 瞳孔調節153
1.正常2.5~4㎜
2.瞳孔が2㎜以下「縮瞳]:ホルネル症候群154*6*17
3.瞳孔が5㎜以上[散瞳]:動眼神経麻痺
(2) 瞳孔反射異常
対光(-)輻輳(+):アーガイル・ロバートソン徴候*4]脊髄癆、進行麻痺155
3)三叉神経*4→省略
4)顔面神経*4*14
(1) 中枢性顔面神経麻痺
1.特徴 :前額部しわ寄せ可能
2.原因疾患:脳血管障害、脳腫瘍等
(2) 末梢性顔面神経麻痺
1.特徴 :前額部しわ寄せ不可能
2.原因疾患:ベル麻痺*4、ハント症候群156、中耳炎、側頭骨骨折等
3.完全に閉眼ができない:[兎眼]
4.閉眼時眼裂間から強膜:[ベル現象]が確認できる
5.味覚障害 :舌の前3分の2の味覚障害*4
6.聴覚過敏 :アブミ骨筋神経麻痺(顔面神経)
5)聴神経
(1) 聴力検査
1.リンネ試験*15
A 方法:気導(耳孔)と骨導(乳様突起)のどちらがよく聞こえるかを比較
B 評価:a気導>骨導 →リンネ陽性:正常者、感音性難聴
b骨導>気導 →リンネ陰性:伝音性難聴
2.ウェーバー試験
A 方法:音叉を前額部正中線上にあて左右どちら側に強く聞こえるかを検査
B 評価:a患側>健側 →伝音性難聴
b健側>患側 →感音性難聴
6)舌咽・迷走*4*9*14・副神経
迷走神経麻痺:嗄声*9*14・無声
7)舌下神経*14:障害時には舌偏位、舌萎縮*4などがみられる
4.精神状態
1)意識障害
(1) 分類
名 称 |
状 態 |
1.清明 |
正常 |
2.傾眠*2 |
軽い刺激で目をさまし反応するが刺激をやめると眠る*2 |
3.昏迷 |
軽い刺激では無反応、痛みや大きい音などには反応する |
4.昏睡*2 |
すべての刺激に反応しない |
1.無欲状態 |
意識はあるが、周囲に関心を示さずぼんやりした状態 |
2.失神 |
意識が一過性に短時間失われる状態 |
3.せん妄*2 |
外刺激に反応せず興奮状態で意味不明なことを口走る |
4.もうろう状態 |
もうろうとして注意力、記憶力が低下する状態 |
2)知能障害
(1) 知的障害:生まれつき知能の発育が遅れているもの
(2) 認知症 :一度発達した知能が低下する場合
3)感情の変化
名 称 |
状 態 |
(1)不安状態 |
強い不安を感じ、不安神経症などでみられ、自律神経症状を伴うことが多い |
(2)抑うつ状態*2 |
絶望感、自責感などが現れ、ささいなことを心配する |
(3)躁状態 |
気分が高揚し、外界を無視して感情を表し、行動に移す |
(4)多幸感 |
異常な誇張された爽快気分をいい、躁状態と異なり、行動の促進はみられず、脳の器質的疾患でみられる |
4)見当識*16:(1)時間*16、(2)場所*16、(3)人物*16などを正しく認識しているかを判断
*.言語障害
1)構語障害:発語に関係する筋、神経の障害によって生じ、言語中枢には異常がない
疾 患 |
原 因 |
特 徴 |
(1)重症筋無力症157 |
構音筋の易疲労性による |
言語は次第に緩徐になり、小声になるが休息 |
すると回復する |
||
(2)球麻痺158 |
構音筋の麻痺と萎縮 |
唇音(パ行)の障害→舌音(タ行)、 |
(延髄運動神経核変性萎縮) |
歯音(サ行)、喉頭音(カ行)の順に障害 |
|
(3)パーキンソン病 |
構音筋の硬直 |
言語は緩徐で不明瞭 |
(4)小脳疾患 |
構音筋の協調の不全 |
話し始めが爆発的*11で調子は不規則不明瞭 |
(5)筋萎縮性側索硬化症 |
球麻痺による |
言語が不明瞭で、嚥下障害を伴う |
2)失語症:言語中枢の障害によって生じ、発語に関係する筋、神経には異常はない
名 称 |
原 因 |
特 徴 |
(1)運動性失語症 (ブローカ失語) |
前頭葉運動性言語中枢障害 |
言語・文字了解は可能であるが、自発言語不能 |
(2)感覚性失語症 (ウエルニッケ失語) |
側頭葉感覚性言語中枢障害 |
言語の流暢性はあるが、話し言葉の理解、書字、音読が障害される*8 |
5.不随意運動
1)振戦159*7
特徴 |
名称 |
疾 患 |
(1)周期が短く、振幅の小さな振戦 |
|
バセドウ病*7など |
(2)粗くて、遅い振戦 |
丸薬まるめ運動160 |
パーキンソン病 |
(3)動作時にみられる振戦 |
企図振戦 |
多発性硬化症 小脳疾患 |
(4)手を前方に伸ばし背屈させると上肢を不規則に屈伸し鳥が羽ばたくようにみえる振戦 |
羽ばたき振戦 |
肝性昏睡161 |
(5)腕を側方に上げ、そのまま保持させると腕を激しく上下させ、羽ばたくように動かす |
羽ばたき運動 |
ウイルソン病162 |
2)不随意運動163
名 称 |
特 徴 |
原因疾患 |
(1)舞踏様運動 |
不規則で目的のない非対称性の迅速多様性運動164 |
小舞踏病165、 ハンチントン舞踏病166 |
(2)バリスムス*16 |
上肢下肢を投げ出す粗大な運動167*16 |
視床下核168障害 |
(3)アテトーゼ*16 |
指をくねらす等の緩徐な持続性運動169 |
脳性小児麻痺170 |
(4)ジストニー(ジストニア*16) |
体部の捻転・回転が緩徐に不規則171 |
ウイルソン病 |
(5)ミオクローヌス*13 |
一部の筋が突発的にすばやく収縮172*13 |
脳炎・脳炎後遺症 |
(6)チック*16 |
突発的、無目的性に、急速な運動や発声が起きる |
心因性・習慣性 |
3)テタニー173の原因*12:過換気症候群、副甲状腺機能低下症、原発性アルドステロン症*12
6.運動失調
検査方法 |
脊髄性運動失調*13*17 |
小脳性運動失調 |
前庭性運動失調 |
ロンベルグ徴候*5*6*7*13*15*17 |
強度の陽性 |
陰性 |
中等度陽性 |
その他の検査174*15 |
|
|
|
7.髄膜刺激症状*4*6:髄膜炎、クモ膜下出血などが原因
検査名 |
方 法 |
陽性所見 |
||
1)項部強直*4*6 |
仰臥位で頭部を他動的に前屈させる |
筋の抵抗が強く痛む |
||
2)神経伸展試験 |
|
|
||
|
(1)ケルニッヒ徴候*4*6*14 |
仰臥位で股・膝関節を90゜に屈曲させ膝関節を他動的に伸展させる |
135度以下の下腿の伸展で下肢後面に疼痛 |
|
|
(2)ラセ−グ徴候*4 |
仰臥位で下肢を伸展させたまま、他動的に股関節屈曲させる |
70度以下で下肢後面に疼痛 |
|
|
(3)ブルジンスキ−徴候*6*14 |
仰臥位で頭部を他動的に前屈させる |
痛みで股・膝関節の自動的屈曲が生じる |
8.障害部位による特徴
障害部位 |
*7 筋トーヌス |
*6 不随意運動 |
*5*6*7 深部反射 |
*5*7*14 病的反射 |
*6*7 一次性筋萎縮 |
(1)錐体路障害*5*7 (片マヒ) |
亢進 |
(-) |
亢進 |
*3*5 (+) |
(-) |
(2)錐体外路障害*14 (パーキンソン病) |
亢進 |
(+) |
ほぼ正常 |
(-) |
(-) |
(3)下位運動ニューロン障害*6*7 (腓骨神経麻痺) |
低下 |
(-) |
減弱・消失 |
(-) |
(+) |
(4)筋肉障害 (筋ジストロフィー症*3) |
低下 |
(-) |
*3*10 減弱・消失 |
(-) |
(+) |
(5)神経・筋接合部障害 (重症筋無力症) |
低下 (疲労時) |
(-) |
正常が多い |
(-) |
(±)175 |
IX.運動機能検査
1.徒手による整形外科学的検査法
1)頚部の検査
検査名 |
検査方法 |
陽性所見 |
障害 |
(1)スパーリング・テスト*4*9 |
頭部を(軽度後屈位で)患側に倒し、 前頭部を軸方向に下方に圧迫 |
患側の頚、肩、上肢に疼痛・しびれ感の誘発・増強 |
頚部神経根の圧迫 |
(2)ジャクソン・テスト*7 |
A頭部をできるだけ後屈させ、頭をさらに軸方向に下方に圧迫 |
||
B患者の後方に立って、一側の手掌を前頭部に当て頭部を健側へ側屈させ他側の手を患側の肩に当て押下げる |
|||
(3)イートン・テスト
|
A頭部を健側に屈し、助手が頭部と健側の肩を固定し、検者が患側上肢を斜下方に牽引する |
||
B検者が患者の背後に立ち、一方の手で頭部を健側に傾けて固定し、他方の手で患側手首を持って後方挙上するとともに、手関節を背屈する |
|||
(4)肩押下げ検査法 |
ジャクソンのBの方法と同様 |
||
(5)頚椎叩打法 |
打腱槌で頚椎(棘突起)を叩打 |
2)胸郭出口症候群の検査法*9
検査名 |
検査方法・陽性所見 |
疾患・障害 |
|
(1) アレンテスト*9 (胸郭出口部圧迫テスト*4) |
上腕を水平位まで外転、肘関節を90度屈曲、手掌を前に向けさせ脈拍を検査し、次に頭部を強く健側に回旋し脈拍を調べる |
橈骨動脈の脈拍の減弱または消失 + 疼痛・しびれ感の誘発・増強 |
斜角筋・頚肋症候群 |
(2)アドソン検査法*9 |
頭部を患側に回旋、さらに後屈、その位置で深呼吸させる |
||
(3)エデン検査法 |
胸を張らせ肩を後下方に引き下ろさせる |
肋鎖症候群 |
|
(4)ライト検査法*7*9 |
肩関節90度屈曲(前方挙上)、 前腕90度屈曲で脈拍をみながら後方に90度(肩関節外転)移動させる |
過外転症候群 |
|
(5) モーレイ検査法*9 |
前斜角筋部を圧迫 |
患側の頚、肩、上肢に疼痛・しびれ感の誘発・増強 |
斜角筋・頚肋症候群 |
3)いわゆる五十肩の検査法
(1)三角筋下滑液包テスト (ダウバーン徴候) |
肩峰下部に圧痛があるが、他動的に90度外転すると圧痛が消失する |
三角筋下滑液包炎 腱板損傷 |
(2)ペインフルアークサイン (有痛弧徴候) |
肩関節を他動的に外転すると、外転30 (60度)から110度の範囲で疼痛が強くさらに外転すれば痛みはなくなる(最大外転位から基本肢位への逆も同様) |
腱板損傷 (特に棘上筋腱) |
(3)ヤーガソンテスト*7 |
肘関節90度屈曲させ、検者が前腕を回内位に保持し、検者の力に対抗して腕を回外させる→肩関節部に疼痛 |
上腕二頭筋長頭腱腱鞘炎 |
(4)ストレッチテスト |
検者が患者の肘を持ち、肘関節伸展位で上肢を伸展させ肩関節部前面に痛みが生じたとき、肘屈曲で痛みが消失 |
上腕二頭筋長頭腱腱鞘炎 |
4)腰痛、坐骨神経痛検査法
(1)ラセーグ徴候*6*7*9 (神経伸展テスト*9*11) |
患者を仰臥位において膝を伸展したまま股関節を屈曲すると大腿後側に放散痛(40度から50度しか挙上できない) |
腰椎椎間板ヘルニアによる神経根刺激 |
(2)ガワース・ブラガード徴候*4 (神経伸展テスト*4) |
仰臥位で、膝を伸展したまま他動的に股関節を屈曲し、さらに足関節を背屈すると大腿後側に放散痛 |
腰椎椎間板ヘルニアによる神経根刺激 |
(3)ボンネット・テスト |
仰臥位で、股関節と膝関節を直角に曲げ、さらに大腿の内旋、内転を強制すると大転子の後方で坐骨神経が骨盤より出てくる部分に疼痛 |
梨状筋症候群 (坐骨神経痛) |
(4)上殿神経域圧迫テスト |
上前腸骨棘から上後腸骨棘までを四等分し、外上方1/4の領域の圧痛を検査 |
椎間板ヘルニア |
5)股関節障害の検査法
(1)パトリックテスト*11 |
他側の伸展した下肢の膝の上にのせ、検査側の膝の内側に手を当て、外方に圧迫すると痛みのため膝がベッドにつくまで股外転できない |
股関節障害 |
(2)トーマス股屈曲テスト*11 |
仰臥位で患者に一側の膝を胸につけるよう両手で抱かせると、患者の腰の下に挿入した検者の手に圧力が加わり腰椎前弯が除かれるのがわかり、患側の大腿がベッドから離れる |
股関節屈曲拘縮 |
(3)トレンデレンブルグ徴候*4 |
患側肢で片脚起立させると、健側の骨盤が下降する |
先天性股関節脱臼 中殿筋麻痺 |
6)膝関節障害の検査法
(1)マックマレーテスト*9 |
仰臥位にし、検者の一方の手で患者の足を、他方の手を膝の前面におき、指を関節裂隙部に沿わせ、膝を最大屈曲させ、下腿をできるだけ内旋、膝関節外反(外旋、膝関節内反)させつつ、そのままゆっくり膝を伸展する |
半月板障害 |
(2)アプレーテスト |
伏臥位で、検者は足をつかみ、膝を90度屈曲させ、検者は自分の膝を患者の大腿の後面にのせ、大腿を固定してから、足に力を加えて下方に押し(足を引き上げ)、かつ下腿を内方(外方)に捻転する |
半月板障害 側副靱帯障害 |
(3)膝の側方動揺性の検査法 |
膝伸展位で他動的に外反、内反させる |
側副靭帯損傷 |
(4)(前方)引き出しテスト*11 (ドロワー徴候) |
膝90度屈曲位で、他動的に下腿を大腿に対してに前方に引きき出す(後方に押す) |
前(後)十字靭帯損傷 |
(5)ラックマンテスト |
膝20~30度屈曲位で他動的に下腿を大腿に対して前方に引き出す |
前十字靭帯損傷 |
7)その他
(1)ファレンテスト*9 |
両手首を掌屈し手背部を合わせてお互いに押しつけ、60秒ぐらい持続させると指の異常感覚が生じる |
正中神経圧迫 (手根管症候群) |
(2)バレー徴候*15 |
1.下肢では腹臥位で膝関節を約135°に屈曲させ、そのまま保持させると麻痺側下肢が下降する。 2.上肢では、閉眼させ、手のひらを上にして前方に水平挙上し、そのまま保持させると麻痺側上肢が下降する。 |
錐体路障害*15 |
2.関節可動域測定(ROM):関節を運動させた場合の可動範囲(他動的可動域で表示*7)
1)手関節の運動方向*11:屈曲(掌屈)、伸展(背屈)、橈屈、尺屈
2)股関節の運動方向*10:屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋
X.その他の診察法
1.救急時の診察*7(補助具を用いた人工呼吸は1次救急に含まない*8*16)
1)第1期:(1)気道確保*4 [頭部後屈オトガイ挙上法*4]
(2)呼吸管理
(3)循環維持176*13*15*16
2.妊産婦の診察
1)妊娠中毒症177:(1)前期妊娠中毒症*13:妊娠悪阻*13
(2)後期妊娠中毒症:浮腫、高血圧、蛋白尿、子癇178、中毒性脳出血
第2章 臨床検査法
I.一般検査
1.尿検査
1)尿検査
(1) 尿量
1.乏尿
A 定義:尿の生成低下で、1日尿量が400ml以下のもの
B 疾患:急性腎炎*18・腎不全、ネフローゼ症候群発症期、慢性腎不全末期
2.無尿
A 定義:尿の生成低下で、1日尿量が100ml以下のもの
B 疾患:1.乏尿と同様
3.尿閉*18
A 定義:膀胱内に尿が貯留しているのに、排尿できないもの
B 疾患:前立腺肥大179、脊髄排尿中枢障害
4.多尿*18
A 定義:1日尿量が2500ml以上のもの
B 疾患:糖尿病、尿崩症など
(2) 尿の比重
1.低比重尿*3 :尿崩症180*3*18、尿濃縮力障害、多量の飲水
2.高比重尿*18:糖尿病*3、ネフローゼ症候群*3、うっ血性心不全*3、発汗多量、発熱時
(3) pH
1.酸性尿*18 :アシドーシス(糖尿病、飢餓*18)
2.アルカリ尿 :血尿、細菌尿
2)尿化学的検査
(1) 尿蛋白増加
病的蛋白尿:腎炎、ネフローゼ症候群などの腎疾患
(2) 尿糖増加
1.過血糖性糖尿:血糖値が高くて(170mg/dl以上181)尿糖陽性 →糖尿病
2.腎性糖尿 :血糖値は正常だが腎糖排出閾低下182で尿糖陽性→腎機能障害
3.一時的な糖尿:甲状腺機能亢進症、過食、重症髄膜炎、脳外傷、心筋梗塞
(3) ビリルビン
1.検出 :A 肝細胞性黄疸(肝炎、肝硬変) →抱合型(直接)ビリルビン増加
B 閉塞性黄疸(胆石症、胆のう炎)→抱合型(直接)ビリルビン増加
2.非検出*18: 溶血性黄疸(溶血性貧血183*18) →非抱合型(間接)ビリルビン増加
(4) ウロビリン体184
1.増加 :A 肝細胞性黄疸、B 溶血性黄疸
2.減少、欠如:閉塞性黄疸(腸内への胆汁流出障害)
(5) ケトン体(アセトン体)
増加185 :重症糖尿病、飢餓、小児消化不良症、重症悪阻186、消耗性疾患
(6) 尿沈渣187 :赤血球、白血球、腎上皮細胞、円柱188を検査
2.血液検査
(1) 赤血球、血色素、ヘマトクリット189
低値 :貧血(鉄欠乏性・悪性・溶血性貧血、白血病、大量出血などによる)
(2) 白血球数
1.増加*1 :感染症*1、熱傷、心筋梗塞、妊娠、白血病(異常な白血病細胞が多数出現)
2.減少*5 :ウイルス感染症*5、再生不良性貧血、放射線障害など
(3) 網赤血球190
1.増加 :溶血性貧血 (赤血球産生亢進)
2.減少 :再生不良性貧血191(赤血球産生不良)
(4) 赤血球沈降速度192
1.促進 :炎症、貧血、多発性骨髄腫、膠原病、結核、心筋梗塞など
2.遅延 :赤血球増加症、播種性血管内凝固症候群(DIC)193
3.喀痰検査
(1) 錆色痰*15 :大葉性肺炎*15
(2) 膿性痰*15 :肺化膿症*15
(3) 粘液性痰*15:気管支喘息*15
II.生化学検査
1.血液検査
(1) 総蛋白減少 :血漿蛋白の漏出
(2) アルブミン減少:肝機能障害、栄養不良
(3) グロブリン増加:細網内皮系疾患、慢性感染症など
(4) A/G比低下 :アルブミンの産生減少やグロブリンの産生増加による
2)血清トランスアミナーゼ196
(1) GOT(AST):肝、心筋、骨格筋、腎に存在
(2) GPT(ALT):大部分は肝に存在、約1/3は腎に存在
(3) 異常
1.GOT,GPTともに上昇 :急性・慢性肝炎*1、肝硬変、肝癌*1
2.GOT上昇, GPTは正常か軽度上昇*1:心筋梗塞*1、進行性筋ジストロフィー症
3)ビリルビン197(尿検査と同様)
(1) 直接ビリルビン上昇 :肝細胞性黄疸、閉塞性黄疸
(2) 間接ビリルビン上昇*16 :溶血性黄疸*16
4)尿素窒素198(BUN)
高値:腎機能低下
5)クレアチニン199
上昇:腎機能低下
6)尿酸200
高値:痛風(8~10mg/dlに増加)、腎機能低下、高血圧、うっ血性心不全など
7)コレステロール
(1) LDLコレステロール
高値:高脂血症、糖尿病、甲状腺機能低下症、腎炎
(2) HDLコレステロール201
低値:動脈硬化性疾患
8)血糖
測定法:(1)空腹時測定法202、(2)75gブドウ糖経口負荷法203
高値 :糖尿病、腎性糖尿病、クッシング症候群など
9)筋原性酵素204:GOT、LDH、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)、クレアチンキナーゼ(CK*10)、アルドラーゼ(ALD)などがある
高値:進行性筋ジストロフィー症、心筋梗塞などで筋の変性・壊死が生じた場合
10)免疫血清学的検査
(1) CRP(C反応蛋白):疾患鑑別は出来ないが、病変の活動状態を推定する
(2) リウマチ因子検査*4 :関節リウマチ*4患者の約80%が陽性を示す
(3) ASO価測定*4 :A群β溶血性連鎖球菌の感染(リウマチ熱*4、急性糸球体腎炎*4等)で陽性
III.生理学的検査および画像診断の概要
1.心電図*2*4*6
(1) 検査が重要な疾患
1.不整脈*2*6(刺激生成・伝導異常)、2.心房・心室肥大*2、3.心筋梗塞*2*6・狭心症*6 、4.心膜炎 、5.電解質異常*4(K,Ca)、6.心臓へ影響する薬剤、7.全身性疾患(粘液水腫など)
第3章 治療法
I.理学療法
1.物理療法
1)ペースメーカー装着者に対する禁忌*11
超短波治療器、低周波治療器*11、磁気共鳴装置(MRI)、電気メスなどは絶対に使用してはならない。
2)低エネルギーレーザー療法*14
低エネルギーレーザーは一般に100mw以下の極めて弱い出力のレーザーを用いて、関節リウマチなどの①炎症の軽減や②疼痛の緩和、③創傷治癒促進*14などを目的として使用されている。
2.運動療法
1)良肢位:拘縮等により関節が固定されても日常生活動作に比較的支障のない肢位
|
関 節 |
良肢位 |
(1)上肢 |
肩関節 |
約70°外転位、軽度屈曲位、内外旋中間位 |
肘関節*13 |
約90°屈曲位*13 |
|
前 腕 |
回内外中間位 |
|
手関節*13・指 |
ボールを握るような肢位(背屈10°*13) |
|
(2)下肢 |
股関節 |
軽度屈曲外転位、内外旋中間位 |
膝関節*13 |
約10〜20°屈曲位*13 |
|
足関節*13 |
約 5〜10°屈曲位*13 |
第4章 臨床心理
I.患者の心理
1.概要
2.神経症と心身症
1)心身症 :身体疾患であっても発病に心理的要因が関与している症候群をいう
2)神経症*5:精神的原因(心因)によって起こる精神神経症状をもつ疾患で
不安神経症205、恐怖症206、強迫神経症207、心気症208*5、離人神経症209抑うつ神経症210、ヒステリー211、神経衰弱212など
第5章 症候
I.全身の症候
1.発熱*1
1)定義 :体温中枢に異常*1があり、正常体温より高い体温になっている状態
2)診断 :感染症213(白血球増加)、脳炎・髄膜炎(頭痛、項部強直)、悪性腫瘍214(体重減少)、膠原病215(皮疹、関節痛)*1
3)随伴症状:悪寒*15・戦慄、頭痛*15・頭重、関節痛*15、発汗、顔面紅潮や脈拍数増加
2.めまい*1*17
1)定義
(1) 真性眩暈(めまい*1) :体や周囲がまわるなど、運動性感覚*1が生じる
(2) 仮性眩暈(めまい感*1):眼の前が暗くなるなど、体が不安定な感覚*1
2)病態
(1) めまい :平衡感覚障害による
(2) めまい感:一過性脳循環障害(一過性脳虚血状態*17)が原因と考えられ、平衡感覚障害(眼振*17)はなく、眼前暗点*17がみられ、失神性めまい*17とも呼ばれ、貧血、血圧異常、自律神経失調症*1など生じる
3)分類
(1)大脳皮質性:てんかん
(2)眼筋性
(3)小脳性*1 :小脳疾患
(4)耳性
1.迷路性(メニエール病*1)
2.前庭性(小脳橋角腫瘍)
3.浮腫
1)原因*2*4
(1)静脈圧・毛細管圧上昇*3*4
(2)毛細管透過性亢進
(3)血漿膠質浸透圧低下 *4(低蛋白血症など*2*3)
(4)水分・塩類の腎排出能力低下*3*4
(5)食塩過剰摂取
(6)アルドステロン、バソプレッシン(抗利尿ホルモン)の分泌過剰*4など
II.感覚器
1.難聴
1)定義:音を知覚する能力が低下した病態
2)分類・原因
(1) 伝音性難聴*15:耳管狭窄*15、耳管炎、中耳炎、乳様突起炎、耳硬化症など
(2) 感音性難聴 :内耳炎、メニエール病*15、突発性難聴*15、老人性難聴、騒音性難聴聴神経腫瘍、小脳橋角腫瘍、多発性硬化症*15、脳腫瘍
(3) 混合性難聴 :中耳炎の内耳波及、側頭骨骨折
(4) 心因性難聴 :ヒステリ-、精神的ショック
III.呼吸器、心臓、血管
1.呼吸困難
1)定義:呼吸運動が不快な努力を伴って意識される状態[呼吸困難*1]
2)基準:ヒュー・ジョーンズの分類(Text P163~164)
3)原因:
(1)呼吸器疾患(気道の狭窄、気管支喘息、肺疾患、気胸など)
(2)心疾患(左心不全*1(心臓喘息*1)、右心不全*1)
(3)貧血(代謝亢進)
(4)過換気症候群216*1*5
4)治療:過換気症候群→紙袋を口にあてて呼吸させる(再呼吸法)
IV.消化器
1.腹痛
1)急性腹症*3
(1) 定義:1.急激に起こり 2.強い腹痛を伴い 3.緊急手術*9を考慮させるもの
(2) 鑑別:
疾 患 |
腹痛部位 |
疼痛の放散部位 |
1. 急性虫垂炎 |
心窩部→回盲部 |
|
2.胃・十二指腸潰瘍穿孔*3 |
心窩部→全腹部*3 |
|
3.腸閉塞 |
腹部全般 |
|
4.急性胆のう炎*1、胆石症*3 |
右季肋部*1~心窩部 |
右背部、右肩*3 |
5.急性膵炎*16 |
心窩部 |
左背部、左肩*16 |
6.腸間膜血管血栓症 |
腹部全般 |
|
7.卵巣嚢腫茎捻転*3*9 |
下腹部 |
|
8.子宮外妊娠破裂 |
下腹部 |
|
(3) 放散痛部位:
1.狭心症*3、心筋梗塞 |
前胸部 |
左肩*3、左上肢 |
2.尿路結石(尿管結石*3) |
下腹部 |
腰部、鼠径部*3、大腿部 |
2.下痢
1)急性下痢 :急性腸炎、食中毒、細菌性赤痢、アメーバ赤痢など
2)慢性下痢*1:過敏性腸症候群炎*1*8、潰瘍性大腸炎*1*8、慢性小腸炎、吸収不良症候群*1、胃切除症候群*8など
V.泌尿・生殖器
1.尿量異常
1)多尿
(1) 定義:尿量が1日2,500mlをこえる場合
(2) 原因:
1.抗利尿ホルモン分泌減少:尿崩症
2.腎疾患 :腎性尿崩症
3.その他 :糖尿病など
2.排尿障害(頻尿、排尿痛、尿失禁)
1)頻尿
(1) 定義:尿量に関係なく排尿回数の多い状態(昼間8回以上、夜間1回以上)
(2) 原因:
1.膀胱、尿道の異常刺激 :膀胱炎、尿路結石症*18、前立腺疾患
2.その他 :尿成分異常による刺激(酸性尿など)
VI.神経、運動器
1.頭痛*9*17
分類名 |
原因・疾患 |
1)片頭痛型血管217*9*10*17 |
頭蓋内外の血管の異常反応により、発作性・拍動性*10に生じる |
2)群発頭痛218*9*17 |
片側の眼窩周囲の激しい痛み*17を特徴とする再発性の頭痛 |
3)筋収縮性*9*10(緊張型*17) |
筋の異常収縮により、締めつけられるような頭痛*17が生じる |
4)血管運動神経性鼻炎反応性 |
鼻粘膜の浮腫・充血 |
5)非片頭痛型血管性 |
非反復性の頭部動脈拡張:(1)高血圧、(2)有熱時、(3)CO中毒 |
6)牽引性*9 |
脳内組織の牽引による偏在 (1)脳腫瘍*9 、(2)脳浮腫 |
7)頭部組織炎症性 |
(1)髄膜炎*10、(2)脳炎 |
8)クモ膜下出血*10による頭痛 |
金槌で殴られたような激痛*17が生じる |
2.頸肩腕痛*5(頚肩腕症候群)
1)分類
(1)頚椎症
1.頚椎椎間板ヘルニア*5、2.変形性頚椎症
(2)胸郭出口症候群*5
1.斜角筋症候群 2.頚肋症候群 3.肋鎖症候群 4.過外転症候群
(3)その他
1.後縦靭帯骨化症*5など
注釈
- [←1]
:主な原因は成長ホルモン産生下垂体腺腫による
- [←2]
:骨、軟骨、軟部組織、皮膚、臓器の肥大を呈する病態で、四肢末端の肥大、前額部・下顎の突出、鼻翼・口唇の肥大がみられる
- [←3]
:長管状骨の成長異常が生じる常染色体優性遺伝疾患。心臓弁膜症や眼症状(高度の近視)などを合併する
- [←4]
:軟骨の骨形成過程が障害される疾患で、四肢が短い小人症がみられる
- [←5]
:主としてビタミンDの欠乏によって起こり、成長の遅延と骨の変形をきたす
- [←6]
:新生児期に先天的に発症する粘液水腫
- [←7]
:下垂体前葉からの成長ホルモン分泌低下による。
- [←8]
:性染色体異常により女子のみにみられ、性腺形成不全、外反肘、翼状頸(側頚部に過剰な皮膚のたるみ)などがみられる
- [←9]
:副腎皮質からの糖質コルチコイドの分泌が過剰となり、脂質代謝が亢進する
- [←10]
:体幹は肥るが四肢は正常
- [←11]
:[クラインフェルター症候群]X染色体過剰に由来する性染色体異常症候群で、成人では肥満傾向となる
- [←12]
:膵ランゲルハンス島腫瘍がインスリンを産生・分泌することにより、特に空腹時に低血糖症状が出現する。患者は低血糖発作を恐れ、それを避けるために何度も食事を取り肥満となる。
- [←13]
:主に思春期の女子にみられる。やせ願望に基づいて発症し、極端な低体重と無月経をきたす。
- [←14]
:血中に存在する甲状腺刺激ホルモン受容体抗体の甲状腺刺激作用のため、甲状腺がびまん性に腫大し、甲状腺ホルモンの産生が高まり甲状腺機能亢進症をきたす
- [←15]
:分娩時の大出血またはショックによる下垂体壊死が起こり、下垂体から分泌されるホルモンが全般的に減少し、月経不順や無月経、急激な体重減少、脱毛、易疲労感、低体温、性欲減退などを伴う
- [←16]
:副腎皮質機能の低下により生じ、全身の皮膚・粘膜にメラニン色素の沈着や、低血圧、代謝低下がみられる
- [←17]
:インスリンの不足により引き起こされる持続的高血糖状態を呈する疾患で、さまざまな合併症がみられる
- [←18]
:副腎髄質などに発生したクロム親和性細胞腫瘍がカテコールアミンを分泌して高血圧などを引き起こす
- [←19]
:重度の栄養不足のため全身状態がきわめて不良な状態をいい、高度のるいそうが生じる。カヘキシーとも呼ばれる
- [←20]
:気道の可逆性狭窄による発作性の呼吸困難と喘鳴を主徴とする疾患
- [←21]
:左心不全による肺うっ血や肺浮腫に続発する気管支収縮が原因となり、発作性呼吸困難がみられる
- [←22]
:横臥位・側臥位では、下半身からの静脈還流が増加して肺うっ血により呼吸困難が増悪する。そのため起坐位をとる
- [←23]
:破傷風菌が産生する毒素により、四肢の強直性痙攣や刺激に対する興奮性の亢進がみられる疾患
- [←24]
:病原体による感染、化学的刺激、悪性腫瘍の浸潤によって生じた髄膜(くも膜と軟膜)の炎症をいう
- [←25]
:[閉塞性血栓血管炎]動脈に閉塞性の血管炎が生じ、四肢末梢部に阻血性変化をきたす
- [←26]
:腰部の脊柱管や椎間孔が狭小となり、馬尾あるいは神経根が圧迫されて生じる
- [←27]
:[デュシェンヌ型]遺伝疾患で男子のみにみられ、5歳以下で発症し腰帯筋などの近位筋の筋力低下、筋萎縮が生じる
- [←28]
:[登はん性起立]臥位や座位から起立するときには、大腿に沿って手をついて、よじ登るような動きで上半身を起こす。
- [←29]
:大腿骨頭への血行障害により骨頭の無腐性壊死が生じるが、疼痛は軽く運動時痛が主体となる
- [←30]
:中脳黒質部のメラニン色素細胞の変性萎縮などにより錐体外路系の障害が生じる疾患。顔面筋の硬直と運動減少による
- [←31]
:副腎皮質機能亢進により糖質コルチコイドの分泌が過剰となる疾患
- [←32]
:ファロー四徴*17、心臓弁膜症など(心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、大動脈狭窄症ではみられない*17)
- [←33]
:疾患: 1)溶血性黄疸(赤血球の破壊過剰) →溶血性貧血
2)肝細胞性黄疸(肝臓機能障害→ビリルビン処理が不可)→肝硬変*1
3)閉塞性黄疸(胆道閉塞により停滞したもの) →胆石症
- [←34]
:全身の結合組織における炎症性・変性病変による厚く硬い皮膚(皮膚硬化)を主症状とする原因不明の疾患
- [←35]
:自己免疫疾患で、抗原抗体複合体が各臓器血管に沈着し炎症を起こす
- [←36]
:斜角筋の異常緊張や、頚肋(頸椎部の肋骨)によって斜角筋三角部(前・中斜角筋と第1肋骨で形成)で腕神経叢、鎖骨下動脈が圧迫される病態
- [←37]
:発作性、限局性の浮腫で、眼瞼、口唇などに生じやすい
- [←38]
:腎血流量低下、重力の作用
- [←39]
:膠質浸透圧の変化による
- [←40]
:腎臓の糸球体の透過性が亢進したために、尿中にタンパクが漏出して血漿浸透圧が減少する病態
- [←41]
:低蛋白血症、門脈圧亢進により生じる
- [←42]
:長期間の肝臓のびまん性炎症疾患の結果、肝の線維化により正常な小葉構造が消失し、結節形成をきたした病態
- [←43]
:低蛋白血症により生じる
- [←44]
:ヒアルロン酸やプロテオグリカンなどのグルコアミノグリカン類が蓄積する
- [←45]
:じんま疹とも呼ばれる
- [←46]
:高熱、カタル症状、発疹を特徴とする小児期急性ウイルス性疾患で、発疹は耳後部より始まり顔面、体幹、四肢に拡がる。初めは小さな紅斑状丘疹で、融合して大小不同の斑状疹になる
- [←47]
:発疹が出現する前に、頬粘膜の臼歯に面する部位に周囲に粘膜充血(紅暈)を伴う小さな白い斑点がみられる。
- [←48]
:A群β溶血性連鎖球菌による上気道感染症で、咽頭・扁桃炎、気管支炎などが生じる
- [←49]
:チフス菌の感染によって生じ、発病10日前後に胸腹部に直径2〜3mmの淡紅色の小丘疹が現れる
- [←50]
:両頬部から鼻背部にみられる左右対称性の蝶の形をした紅斑
- [←51]
:口腔内アフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状を主徴とする疾患
- [←52]
:手掌部(母指球,小指球部)の毛細血管が拡張し赤くみえる
- [←53]
:赤く盛り上がった丘疹状の血管拡張を中心にして、そこから周囲に放射状に細く拡張した血管が広がってみえる
- [←54]
:体内の鉄の不足によりヘモグロビン合成が障害されて起こる貧血で、貧血の中で最も多い
- [←55]
:経筋接合部のシナプスにあるアセチルコリン受容体に対する抗体が存在し,自己免疫機序により受容体の破壊現象がみられる
- [←56]
:メルゼブルグの3徴候→1)眼球突出、 2)心悸亢進、 3)甲状腺腫大
- [←57]
:迷路、小脳、脳幹、上部頚椎の疾患などで生じる
- [←58]
:糖尿病によって起こる全身の細小血管症の1つであり、網膜血管の透過性亢進と網膜血管の乏血,閉塞が生じる。
10年間糖尿病→50%、20年間糖尿病→80%にみられる
- [←59]
:網膜視細胞,特に杆体が進行性に変性する遺伝性疾患で、学童期に夜盲で始まり、視野異常と視力障害が進行し失明する
- [←60]
:肝機能障害によりアンモニアが分解されず、体内に増加することによる
- [←61]
:A群β溶血性連鎖球菌による感染症で、発疹は口唇部を除いて全身に拡がり皮膚は鮮紅色となる
- [←62]
:肺胞壁の破壊を伴う、終末細気管支より末梢の気腔の異常な拡大を伴う病態
- [←63]
:心臓の収縮によって心臓前部肋間部が規則正しく隆起すること
- [←64]
:門脈圧亢進時では臍静脈が門脈の側副血行路となり、臍を中心として放射状の静脈の怒張がみられる。下大静脈閉塞時では浅腹壁静脈が側副血行路となり、上行性の静脈怒張としてみられる。肝硬変で生じるものを特に[メズサの頭]と呼ぶ。
- [←65]
:卵巣の内部や表面にできる液体で満たされた袋(嚢胞)のことで比較的よくみられ、そのほとんどは良性
- [←66]
:左右の母指と示指で厚紙などを左右に引かせると、母指内転筋麻痺のために長・短母指屈筋が代償し母指末節が屈曲する
- [←67]
:中年以降の女性に多く、疼痛はなく軽度の屈曲位拘縮をきたす。近位指節間関節に生じた場合はブシャール結節と呼ぶ
- [←68]
:心室中隔欠損,肺動脈狭窄,心室中隔への大動脈騎乗,右室肥大の4つの特徴がみられる心奇形
- [←69]
:持続が長く、低調で、音量が大きく、振動(体表においた指に感じる)も強い
- [←70]
:持続が短く、高調で、音量が小さく、振動も弱い
- [←71]
:含気量の少ない実質臓器などで聞かれる
- [←72]
:清音と濁音の中間の音
- [←73]
:清音に比べ、持続は長くなく、高調で、音量は中ないし大で、太鼓を叩いたような音。弱く打診したほうがわかりやすい。
- [←74]
:閉じた嚢状の中に空気・ガスが存在する部位で聞かれる
- [←75]
:腹水貯留代表疾患→1)肝硬変、2)うっ血性心不全、3)ネフローゼ症候群
- [←76]
:肺組織を破壊する肺炎あるいは感染症を肺化膿症と呼び、肺炎の重症型もしくは慢性型と考えられる
- [←77]
:肺組織の空気含有量の減少による
- [←78]
:清音に比べて持続し、低調で大きい
- [←79]
:心臓の形、大きさをあらわす
- [←80]
:腸管の蠕動運動が種々の原因により減弱・消失し、腸内容の通過障害をきたすもの
- [←81]
:[トラウベの半月形]胃の上方円蓋部の空気によって鼓音が生じる→心窩部左側
- [←82]
:食道噴門部の括約筋の弛緩不全と異常拡張により通過障害をきたす
- [←83]
:喉頭、気管、肩甲間部(第4胸椎の高さ)
- [←84]
:笛声音(ヒューヒュー)
- [←85]
:気管支が不可逆的な拡張をきたした病態。気管支の浄化作用が低下して細菌などが繁殖しやすい
- [←86]
:水泡音(ブツブツ)
- [←87]
:左心または肺静脈に循環障害が生じた時に、肺内に血液がうっ滞し毛細血管が拡張した状態
- [←88]
:握雪音(ギシギシ)
- [←89]
:罹患側は減弱し、健側は増強する
- [←90]
:1)弁の障害(狭窄・閉鎖不全) 2)大動脈・肺動脈の拡張 3)心室・血管の異常な連結 4)心内膜の増生等による
- [←91]
:間隔をおいて疼痛発作とともに爆鳴性の音が生じる
- [←92]
:腸管の蠕動運動が種々の原因(尿毒症、感染症など)により減弱・消失し、腸内容の通過障害をきたすもの
- [←93]
:触ると軟らかく、力を入れさせても硬くならない
- [←94]
:常染色体優性遺伝疾患で、筋萎縮は四肢遠位筋から始まり全身にひろがる
- [←95]
:上位運動ニューロンと下位運動ニューロンを選択的に侵す神経変性疾患で、進行性に経過し予後はきわめて不良
- [←96]
:橋、延髄から出る運動ニューロンや脊髄前角ニューロンが、選択的に変性脱落し神経膠細胞が増生する原因不明の疾患群。最近は下位運動ニューロン疾患と総称される
- [←97]
:[シャルコー・マリー・ツース病]特に腓骨神経が支配する下肢遠位筋の左右両側性で緩徐進行性の脱力と萎縮や、足の変形と下肢遠位部の感覚障害を主徴とする遺伝性末梢神経疾患
- [←98]
:性染色体劣性遺伝疾患で、筋萎縮は四肢近位から遠位に進行する
- [←99]
:急性または慢性に,横紋筋の炎症をみる非遺伝性の自己免疫性疾患
- [←100]
:種々の原因により脊髄に空洞を形成する慢性進行性の疾患で、上肢の遠位筋優位の脱力・筋萎縮が特徴的
- [←101]
:顔や肩甲骨の周囲、上腕の筋が特に障害される
- [←102]
:筋肉は萎縮するが、その間隙が脂肪浸潤によって埋まり、肥大しているようにみえる(腓腹筋に多い)
- [←103]
:筋肉の関節の運動効果を伴わない自発性収縮で、表在性の筋では皮膚上からピクピクと筋の一部分の収縮として観察される
- [←104]
:他動運動で最初強抵抗、その後、急に抵抗消失
- [←105]
:他動運動に対して、最初から最後まで同じ抵抗
- [←106]
:四肢を他動的に揺さぶるとブランブランする状態
- [←107]
:1)骨折部に著明な疼痛(動揺により増強)、2)マルゲーヌ骨折痛(骨折線に沿った限局性の圧痛)、3)軸圧痛(長軸方向の圧で骨折部に疼痛
- [←108]
:腹腔内の炎症が壁側腹膜に波及したことを示す
- [←109]
:同上
- [←110]
:黄疸とともに右季肋部に球状の腫大した胆嚢が触知されるものをいい、総胆管末端部の閉塞で生じる。特に総胆管癌や膵頭部癌*14などの悪性腫瘍によることが多い。
- [←111]
:原因不明で、悪性リンパ腫の約10%を占め、特徴は炎症と免疫不全症状
- [←112]
:代表的なものにウイルヒョーリンパ節腫大がある。胃癌・左肺癌からの転移で、左鎖骨上窩のリンパ節が腫大する。
- [←113]
:100回/分以上の脈拍数の場合をいう
- [←114]
:房室結節の伝導時間が短縮するために頻脈が生じる また、心筋収縮力が増加し、循環血液量の増加、末梢血管抵抗の低下により心拍出量が増加する
- [←115]
:1℃上昇ごとに8〜10/分多くなる (腸チフスでは体温上昇に比べ脈拍数の増加が軽度にとどまる)
- [←116]
:60回/分以下の脈拍数の場合をいう
- [←117]
:迷走神経刺激による
- [←118]
:高度の徐脈(房室ブロック*3[心ブロック*2]などで40回/分以下)が原因となり脳の虚血による痙攣、失神発作が生じる
- [←119]
:血液が大動脈から左室へ逆流するため、左室の拡大、一回拍出量の増大や脈圧の増加がみられる
- [←120]
:左室から大動脈への駆出障害のため、左室駆出抵抗の増大や心拍出量の低下がみられる
- [←121]
:呼吸による生理的変化で、病的意義はない
- [←122]
:洞結節以外の場所の細胞が何らかの病的原因によって異常興奮を発生して起こる
- [←123]
:うっ血性心不全で、特に高血圧性・虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症など)あるいは弁膜障害に用いられる薬剤による中毒。全身倦怠、消化器症状、眼症状、頭痛、錯乱等の神経症状等がみられる
- [←124]
:心房が洞結節から伝播された刺激によって、規則正しい興奮収縮を行わず、心房内で発生した刺激に応じて、頻回に無秩序に興奮収縮を繰り返す状態
- [←125]
:心房から心室への伝導が途絶または伝導遅延している状態をいう。第2度では心拍動が遅く不整脈が、3度では心房からの電気刺激が心室へまったく届かず、心室の拍動は、房室結節、ヒス束、心室の何れかにより行われて高度の徐脈となる。
- [←126]
:延髄の呼吸中枢や心臓の機能障害で生じる
- [←127]
:腎機能低下により体液恒常性が維持できず、多臓器症状をきたす状態
- [←128]
:細菌によって引き起こされた全身炎症性反応症候群をいい、細菌感染症の全身に波及したもので非常に重篤な状態
- [←129]
:肝内に限局性に膿汁が貯留したもので、化膿性細菌によるものが全体の95%以上を占める
- [←130]
:マラリア原虫の感染によって生じ、悪寒・発熱などの特有な熱発作や貧血および脾腫を主徴とする
- [←131]
:リンパ節、脾臓、骨髄にみられるリンパ組織の悪性腫瘍
- [←132]
:6~12時間ぐらいで正常体温まで下がる
- [←133]
:大動脈閉鎖不全症*11、重症貧血、甲状腺機能亢進症などで第5点が無くなる
- [←134]
:皮膚または粘膜の感覚
- [←135]
:骨膜、筋肉、関節から伝えられる感覚
- [←136]
:四肢がどんな位置をとっているかを感じる
- [←137]
:指などがどちらの方向に動いたかを感じる
- [←138]
:日常よく知っているものを閉眼で握らせ、認識できる
- [←139]
:皮膚に同時に、少しはなれた二つの刺激を識別できる
- [←140]
:皮膚に記号などを書き、判断できる
- [←141]
:どの部位が触れられたかを認識できる
- [←142]
:病変により、後根が刺激されるためと考えられている
- [←143]
:痛覚、温度覚の上行路は中心管付近を通って交差するために障害を受ける
- [←144]
:運動神経線維(ニューロン)の遠心性経路で延髄の錐体を通る経路のことを錐体路といい、随意運動の指令を伝える
- [←145]
:粘膜、皮膚を刺激したときに起こる筋肉の反射
- [←146]
:腱を刺激したときに起こる筋肉の反射
- [←147]
:錐体路障害で出現する*6。乳児では正常でも陽性となることがある
- [←148]
:律動的反復運動をいい、錐体路障害時にみられる
- [←149]
:梅毒の感染後5〜10年に生じる脊髄障害で、脊髄後根および後索に変性が生じる
- [←150]
:両耳側性半盲とも呼ばれる
- [←151]
:病変が視神経の中心部に強いもの
- [←152]
:脳腫瘍、くも膜下出血などによる
- [←153]
:瞳孔散大筋(交感神経)と瞳孔括約筋(副交感神経;動眼神経)で調節される
- [←154]
:頚部交感神経麻痺によって生じ、1)上眼瞼下垂、2)縮瞳*17、3)眼球陥凹*17(眼裂狭小*17)、顔面の発汗低下がみられる
- [←155]
:梅毒感染後に10年の潜伏期を経て発症する髄膜脳炎であり、痴呆をはじめとする 多彩な精神症状を呈する
- [←156]
:顔面神経が帯状疱疹ウイルスに侵されて生じる
- [←157]
:自己免疫によって神経筋接合部にあるアセチルコリン受容体の機能が障害されて、神経筋伝達が阻害される
- [←158]
:延髄と橋にある脳神経の運動神経核の障害によって発語、発声、嚥下、呼吸、循環などの障害をきたす病態をいう
- [←159]
:不随意的に出現する律動的な振動運動
- [←160]
:母指を中指および示指の掌面にこするような運動。振戦は手・前腕にも及ぶ。安静時振戦。
- [←161]
:肝性脳症または門脈体循環性脳症とも呼ばれ、人格変化が意識障害に先行する
- [←162]
:先天性の銅代謝疾患。肝臓や脳などに銅が沈着し、肝炎や不随意運動などをはじめとした様々の中枢神経系症状がみられる
- [←163]
:錐体外路系の障害によってみられる運動過多で先天異常、出生時外傷、脳炎、血管障害、核黄疸(ビリルビンが大脳基底核周辺に沈着して脳細胞を障害する)などによる。
- [←164]
:舌を出したり引っ込めたり、しかめ面をしたり、踊るように連続性の非反復性の運動を示す。
- [←165]
:[シデナム舞踏病]学童(5〜15歳)を侵し、数日〜数カ月で完治。リウマチ熱から発症する
- [←166]
:常染色体優性遺伝疾患で我が国ではまれ。中年以降に発症し、後に知能低下・廃人となる
- [←167]
:舞踏病運動の一種であるが、より急速な運動で、上肢では物を投げるような動作を示す。
- [←168]
:間脳で視床の腹側に位置する神経核で、体性運動の調節に関与する
- [←169]
:ゆっくりと、のたうつような不規則な運動で四肢遠位筋にみられる
- [←170]
:受胎から生後4週以内に脳に何らかの原因で損傷を受け、1)運動および姿勢の異常を示し、2)その症状は一時的でなく永続的であるが、3)進行性に悪化することのないもの の条件を満たす障害
- [←171]
:奇妙な姿勢をとり、主に首、体幹、四肢近位にみられる。
- [←172]
:上肢に生じると手中の物を落としたり、下肢に生じると転倒したりすることもある。
- [←173]
:四肢などの筋肉に有痛性の強直性痙攣が生じるものをいい、上肢では「産科医の手」、「助産婦手位」と呼ばれる
- [←174]
:指鼻試験、手回内回外試験(変換運動)、踵膝試験*15
- [←175]
:約10%に認められるが、顔面諸筋に多く程度は軽度である
- [←176]
:1)毎分100回 2)胸骨が4〜5cm沈む程度に圧迫 3)加圧と除圧の比は1:1 4) 圧迫部位は両方の乳首を結んだ線上の胸骨部分 5) 心マッサージと人工呼吸の回数の比率は30:2*13*15
- [←177]
:妊娠高血圧症候群と呼称することとなり、妊娠20週〜分娩後12週の間に、高血圧または高血圧と蛋白尿がみられるもので、かつこれらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものではないものと定義される(2005.4日本産科婦人科学会)
- [←178]
:妊娠20週以後に初めて痙攣発作を起こし、てんかん等その他の原因が否定されるものをいう。原因不明であるが、脳血管の攣縮と脳浮腫によるものとされ、頭痛や眼華閃発などの前駆症状に始まり、チック期、強直性痙攣期、間代性痙攣期を経て昏睡期にとなる
- [←179]
:加齢とともに前立腺の内腺が腫大し,尿路を圧迫することで排尿障害を呈する良性疾患
- [←180]
:バソプレシンの不足または作用障害により発生する多尿,口渇,多飲を主徴とする疾患
- [←181]
:腎における糖の排出閾値
- [←182]
:尿細管での再吸収障害による
- [←183]
:赤血球寿命が種々の原因により短縮することに伴う貧血の総称
- [←184]
:ウロビリンとウロビリノーゲンを合わせたもの
- [←185]
:糖質供給不足・利用障害で脂肪を燃焼→不完全燃焼によりケトン体発現
- [←186]
:妊娠初期にみられる悪心,嘔気,食欲不振などの消化器症状(つわり)が重症となった状態をいう
- [←187]
:1時間以内の新鮮尿を試験管に入れ、1,000〜1,500回転/分で5分間遠心し、試験管の底に生じた沈渣を顕微鏡で検査する
- [←188]
:尿細管で尿の流れが停滞すると、蛋白、腎上皮、赤血球、白血球が凝固したものが剥離し、尿中に円柱状物質が発現する。腎機能障害を示す。
- [←189]
:血液中に含まれる赤血球の比率(ヘマト→血液、クリット→分離)
- [←190]
:赤芽球から核が抜けた状態の新生赤血球をいい、核が抜けた部分が染色すると網状になる
- [←191]
:末梢血での汎血球減少と骨髄での低形成を主徴とする貧血
- [←192]
:クエン酸ソ−ダを混和した血液を沈降管に入れ、60分間放置したときの上部血漿柱の長さを計測する
- [←193]
:初期には全身の血管内で無秩序に起こる異常な凝固亢進状態により、播種性の微小血栓を生じる。進行すると凝固因子・血小板を使い果たすため逆に出血症状が発現する。肝硬変の合併症としてもみられる。
- [←194]
:アルブミン対グロブリンの比
- [←195]
:血清の中の蛋白質を電気泳動法によって5つのグループに分けたものをいう。(アルブミン分画と,α1,α2,β,γの4つのグロブリン分画)
- [←196]
:アミノ酸の代謝に関わる酵素
- [←197]
:黄疸の原因鑑別をおこなう(尿検査と同様)
- [←198]
:蛋白質の分解による窒素、アンモニアが肝で解毒され尿素が合成される。尿素の産成(肝臓)と排出(腎臓)によって決定。
- [←199]
:クレアチン(肝臓で合成)の脱水物で腎から排出される
- [←200]
:核酸主成分のプリン体が分解された最終産物で、尿酸の体内での過剰産生や腎からの排出低下で増加する
- [←201]
:HDL分画コレステロ−ルのことで、細胞内に蓄積したコレステロ−ルの除去作用がある→善玉コレステロールと呼ばれる
- [←202]
:正常値:110mg/dl未満、糖尿病型:126mg/dl以上
- [←203]
:ブドウ糖を経口投与し、投与後30分ごとに3時間まで毛細血管(耳朶)または静脈採血により血糖を測定する。2時間値の正常値:140mg/dl未満、糖尿病型:200mg/dl以上
- [←204]
:筋肉に存在する酵素で、筋の変性・壊死などによって血中の濃度が上昇する
- [←205]
:不安発作と予期不安を主症状とする
- [←206]
:特定の事物・状況などに対して、不合理だと自覚しながらも不釣合いな恐怖をいだく
- [←207]
:自分でもばかばかしいと思いながら、ある観念や行為にとわれ離れられない
- [←208]
:身体各部に執ように異常感を覚える
- [←209]
:現実の生活に生き生きした実感を感じることができず、空虚感が生じる
- [←210]
:抑うつ状態を主徴し、基本は悲哀気分で、不安感、焦燥感が加わる
- [←211]
:心理的原因によって、意識野が狭窄して人格の統合性が一時的に失われたり(解離型)、運動・知覚機能の障害がもたらされたりする(転換型)状態
- [←212]
:自己の能力に対する不全感とそれを代償しようとする過緊張とが身体面に反映し、疲労感、焦燥感、不眠などを主徴とする
- [←213]
:結核*16
- [←214]
:肺癌*16
- [←215]
:皮膚筋炎*16
- [←216]
:過度の精神緊張*5などによる過剰呼吸の結果、CO2の過剰消失による
- [←217]
:閃輝暗点等の神経症状がみられる
- [←218]
:男性に多く、アルコールが誘因となり、痛みと同側に結膜充血、流涙、鼻閉、鼻汁などを伴う。